日本列島にはおおよそ180種の淡水魚が生息しています。そのうち84種の淡水魚が県内で確認されています。
その生活の場は、山間の渓流、白波の立つ中流域、滔滔と流れる下流域、池や沼、水田の水路などの多様な流れです。
人類の生活や文化と切っても切り離せない身近な川魚はかけがえのない存在です。
広島県の川に生息する希少な淡水魚を紹介します。

紹介する魚:ゴギサツキマスサケスナヤツメアカザイシドジョウオヤニラミ
        ウツセミカジカ(カジカ)メダカカネヒラスイゲンゼニタナゴゴクラクハゼ
広島県内水面漁業協同組合連合会
  広島の内水面
広島県の残したい淡水魚














ゴ ギ
     
サケ科
Salvelinus leucomaenis imbrius
【広島県カテゴリー】絶滅危惧種
【環境庁カテゴリー】地域個体群
(西中国地方のイワナ[ゴギ])
【地方名】こぎ、こーぎ(備北)、いわな(大朝)

中国山地の河川最上流部に生息するイワナの仲間です。
ゴギは日本列島が寒冷だった頃に分布を広げ、現在では標高の高い河川に陸封されたといわれています。
中国山地の山々でたたら製鉄が盛んな頃、朝鮮半島から来たたたら製鉄の技術者がゴギ(魚の意)と言っ
たことに由来するそうです。
体長約20cm、30cmを超えるものはまれです。体側にひとみ大の白から橙色の斑紋があり、頭部にまで
及ぶのが特徴です。
森林伐採による水質の変化や砂防ダムや河川改修による環境の変化により減少しています。
ヤマメやアマゴの放流により生息域が圧迫される例もあります。最近ではアオサギが山奥まで進入し食害
にあっています。
昭和26年には西城川の支流熊野川のゴギが、広島県の天然記念物に指定されています。



サツキマス
  

サケ科
Oncorhynchus masou ishikawae
【広島県カテゴリー】絶滅危惧種
【環境庁カテゴリー】なし
【地方名】 ます、かわます(太田川)、しけ(帝釈)

サツキマスの河川陸封型をアマゴ。
海や湖に降って成長したものをサツキマスと呼ばれています。異名同種ですが生活史に違いがあります。
広範囲を移動し生活するサツキマスは環境の影響受けやすくダムや堰による河川の分断、河川流量の
減少により数が減少しています。11月〜翌年2月にかけて降海(湖)しますが、完全に降らず河川下流域
に留まる個体もいるようです。
沿岸域または湖沼で生活した後5〜6月に河川に遡上します。遡上後はほとんど餌を摂らず、淵で夏の
高水温を避け、増水時に産卵のために川をのぼります。10月下旬頃、河川上流域で産卵し、
産卵後は死亡します。
太田川、小瀬川に生息。帝釈川では下流にダムできてからは溯上はなくなりました。
上流のダム湖(樽床ダム、王泊ダム、温井ダム)には降湖型が生息しています。最大体長50cm。



サ ケ
  


サケ科
Oncorhynchus keta
【広島県カテゴリー】絶滅危惧種
【環境庁カテゴリー】なし

日本にはサケという名の付く魚はベニザケ、ギンザケとサケの3種がいます。
この内、サケが最も南の方まで分布しており、太平洋側では利根川まで、日本海側では山口県の粟野川
までがサケがのぼる川といわれています。
シロザケとかアキアジともいいます。広島県は日本海に注ぐ江の川が、中国山地を貫いて流れています
ので広島県までサケがのぼって来ます。
古い記録によると正徳元年(1711年)9月29日、三次藩主は飛脚をもって、初鮭1尾を広島藩主に献上
したことや、江戸時代後期に地方の物産を記録した”芸藩通誌”という書物に三次のサケのことが書き
残されています。
河口から上流まで障害もなかった昭和の始めごろまではかなりのぼっていたようですが、今では堰や
ダムがいくつもあって、広島県までサケがのぼってくることは少なくなりましたが、江の川では,平成7年
から三次市において「江の川鮭の会」が稚魚の放流を行い,最近は30尾を越えるサケが遡上してます。



スナヤツメ     


ヤツメウナギ科
Lampetra mitsukurii
【広島県カテゴリー】絶滅危惧種
【環境庁カテゴリー】絶滅危惧II類
【地方名】 やつめ、やつめうなぎ、すなはまり、かげーす(小瀬川)

目の後方に7対の鰓穴が並ぶのが特徴です。
円口類のヤツメウナギのなかまは魚類よりも原始脊椎動物の面影を残してます。
北半球の冷寒帯に広く分布し日本には4種が分布しています。
スナヤツメは本州・四国を中心に北海道・九州の一部に分布しています。
広島県では1960年代までは河川の中流域に広く生息していましたが,近年では高原を流れる細流や
きれいな水の流れこむダム湖などに極限られた場所に生息しています。
幼生期(3年間)は砂泥底の中で生活し、成魚となって川で泳いでいる期間は4月頃の数週間だけです。 
成体の体長は約15p.ほかのヤツメウナギのなかまは海に降り魚に寄生して生活するものが多いが
スナヤツメは海に降らず一生をを淡水ですごし寄生生活をしません。



アカザ
   
アカザ科
Liobagrus reini
【広島県カテゴリー】絶滅危惧種
【環境庁カテゴリー】絶滅危惧II類
【地方名】てんきり、てっきり、ちょうきり、てんきら(全県)でんかり(馬洗川)せんぎり(小瀬川)
     あかなまず(呉)てっかり、てっかー、あかぎぎ、てっかつ、さしぎり

橙色の体色と4対のひげが有るのが特徴です。東北地方以南の本州、四国、九州に分布します。
上流の水のきれいなところへ、生息場所をおわれています。
生息する水系は比較的多いですが、固体数は激減しています。刺されるとひどく痛いそうで、そのことから、
多くの地方名が付いています。  川の上流域から中流域の瀬の石の下に潜み、石の間を縫うように泳いで
水棲昆虫などを食べます。産卵期は5月から6月頃で、卵は水のきれいな渓流の流れの早い瀬の、
礫底の石の下の空間に産みつけます。
卵は黄色で約3mmのほぼ球形で寒天質でつながれた不規則な卵塊になる。
雌は産卵場所の近くで卵を保護します。体長9cm


イシドジョウ
    
ドジョウ科
Cobitis takatsuensis
【広島県カテゴリー】稀少種
【環境庁カテゴリー】絶滅危惧II類
【地方名】ほうすじどじょう(仮称)

太田川、江の川の上流域の礫底に生息します。体長6a。島根県高津川で1970年に発見されたドジョウです。
河川上〜中流域の淵の周囲で石が多いところにすむことから、イシドジョウと名付けられました。
西日本のごく限られた河川にのみ生息しています。
日本にはさまざまなドジョウがすんでいますが、本種は尾びれの付け根部分が太く、ずんどうな形をして
いるのが特徴です。主に石の上の藻類や水生昆虫を食べています。
小型で石の間にすぐ隠れてしまうため、見つけるのは困難です。環境の変化に弱く、河川改修などによって
個体数が激減してます。


オヤニラミ
    
スズキ科
Coreoperca kawamebari
【広島県カテゴリー】絶滅危惧種
【環境庁カテゴリー】準絶滅危惧
【地方名】 よつめ(全県)、とうさぶろう(太田川)、おっさかち(馬洗川)、とうざぶろう、とらさぶろう、と       うごろう、ちょうさ、にらみ

日本のスズキ科の魚で一生を河川でおくる淡水魚はオヤニラミだけです。
オヤニラミの仲間はベトナム北部から中国大陸北部までと朝鮮半島と日本列島西部の一部に分布し
13種が知られ,日本ではオヤニラミ1種が分布しています。
京都から北九州と熊本県の一部と香川県の一部に生息しています。広島県は分布のほぼ中央に位置し
各水系に分布しています。生息数は一時減少したようですが今は徐々に回復しています。
水中植物の多い流れの緩やかところにすみ,そこで繁殖するので河川改修により生息場所を失うことが多い。
 成魚の体長は約13p。水の澄んだ川の中流域から下流域の上部のやや深みになった淀みの,
水草や流木などの隠れ場所のあるところに単独で生息しています。


ウツセミカジカ・カジカ

    
カジカ科
Cottus reinii
【広島県カテゴリー】絶滅危惧種
【環境庁カテゴリー】絶滅危惧II類
【地方名】 せごり、うしごっぱ(太田川)、ななせ、ならせ(備北)、うしごり、うしごっぱー(馬洗川)、
       せごっぱ、せごぱー、ごっぱつ、こっぱつ、やせ、どんこ、まえかけごっぱつ

ドンコに似ていますが,鱗がなく、鰓ぶたの後方にとげがあるので区別できます。
カジカは日本特産種で積丹半島以南の北海道・本州・四国と熊本,鹿児島県を除く九州に分布します。
カジカは河川の中流域から上流域にすみ一生を淡水域で生活し大きい卵を産む河川型と,
下流域から中流域にすみ小さい卵を産み,孵化仔魚は海に下り成長したのちに再び川へ上る両側型と,
琵琶湖にすみ産卵期にのみ川へ上り小さい卵を生む湖沼型の3型に分けられていいましたが、
河川型をカジカ、両側型と琵琶湖の湖沼型は遺伝子的にあまり差はないことからウツセミカジカに分類されました。
カジカとウツセミカジカは胸びれの軟条数が前者では12〜14,後者では14〜16区別できます。
広島県では両種が生息しています。小瀬川・太田川・芦田川・江川の上流域にカジカ、中下流域にウツセミカジカが
生息しています。


メダカ
    
メダカ科
Oryzias latipes latipes
【広島県カテゴリー】絶滅危惧種
【環境庁カテゴリー】絶滅危惧II類
【地方名】 ねぶと、ねぶとご、ねんぶつご、めぶと、めぶとご、

メダカのなかまは東アフリカからインドネシアまでと、中国大陸南部から日本列島に分布し7種が知られ日本
には1種が分布しています。
広島県では各水系の周辺的な水域に分布するが近年の生活排水などによる河川汚濁により数は
少なくなっています。江川水系では標高400m付近まで生息しますが、川の勾配の大きい太田川では
標高20mの可部町より上流には生息していないようです。
甘日市町の極楽寺山の山頂の蛇の池(標高640m)に生息しており,ここがもっとも高標高のところです。
体長約3p.河川の周辺の水溜まりや水田やその水路,市街地の流れの緩い小川や浅い池など止水域に生息します。



カネヒラ
   
コイ科
Acheilognathus rhombeus
【広島県カテゴリー】なし
【環境庁カテゴリー】なし
【地方名】にがぶな(全県)ええにょうぼう(可愛川)あきたなご(土師)

日本のタナゴの仲間では大型で、成魚では10〜13cmまで成長します。
琵琶湖以西の本州,九州北部に分布しています。県内では江の川、芦田川に生息します。
雄の婚姻色の出たカネヒラは虹色に輝き特に綺麗です。
タナゴの仲間は春に産卵するのが普通ですがカネヒラは秋にイシガイなどの淡水二枚貝の鰓に卵を産み
つけます。産み付けられた卵は半年間、貝の中で過し翌年の春、孵化します。貝の中に産卵するのは、
安全に稚魚を育てるのに都合が良く、一方、貝はグロキジュウムと言う幼生を魚の鰭や鰓に付着させ分布域
を広げることが出来ます。
タナゴ類と二枚貝は種族維持のためにお互いなくてはならない関係です。



スイゲンゼニタナゴ
   
コイ科
Rhodeus atremius suigensis
【広島県カテゴリー】絶滅危惧種
【環境庁カテゴリー】絶滅危惧IA類
【地方名】 にがぶな(全県)

国内の分布は岡山県を中心として兵庫県の千種川から広島県の芦田川の水系までの山陽地方の
ごく限られた範囲に分布しています。タナゴ類の中では小型で全長約5cmです。
鰓ぶた後部から尾びれまでつながる淡い青緑色のラインが特徴です。
国内では、1963年に岡山県吉井川で初めて確認され、韓国の「水原」で確認されたものと同種ではない
かということから、この名がついています。
産卵は他のタナゴ類と同じく、イシガイやマツカサガイなどの淡水二枚貝の鰓に卵が産みつけます。
平野部の小川や本流から引かれた用水路の流れが緩やかなところにすんでいます。
各地の生息域は水路改修や河川改修などにより、急速に失われています。
また、マニアによる大量採集や産卵母貝である淡水二枚貝の減少などもあり、絶滅が心配されていいます。 


ゴクラクハゼ    
   
ハゼ科
Rhinogobius giurinus
【広島県カテゴリー】絶滅危惧種
【環境庁カテゴリー】なし
【地方名】 ごり

小型のハゼの仲間です。体側にコバルト色のうろこがあり,ほおに複雑な模様があるのが特徴です。
東北,北陸地方以南の沿岸に広く分布しています。
広島県では1960年代には太田川や芦田川の下流域で多くみられましたが、現在では小瀬川の下流域
にわずかながら生息しています.急激に減少した原因は不明です。
成魚の体長7p.水の流れの緩い平瀬や淵に生息し水性昆虫や藻類などを食べます。
産卵期は7月から10月です。産卵は平瀬の礫底の石の下面に一層にうみつけます。
孵化仔魚は海に下り約2か月で体長約2pに成長し川へのぼり、1年で約3pになり成熟します。